一般社団法人 千葉県作業療法士会 Chiba Assocition of Occupational Therapists

一般の方へ Guest

館山で働く作業療法士に臨床のことや学会発表について聞いてみた!

We asked occupational therapists about conference presentations and clinical practice.

 

現在、どのような領域、職場で働かれていますか?

館山市にある「たてやま整形外科クリニック」で働いています。

館山の場所はチーバくんの足首あたりです。海に面した温暖な気候で、山や高い建物がないので空が広く表情が豊かです。冬に吹きさらす西風は強烈です。

たてやま整形外科クリニックは無床の整形外科診療所で外来リハ・通所リハ・訪問リハの各事業を有しています。館山市は高齢化率40%超(令和5年4月1日現在)の地域でもあり、地域リハの推進にも取り組んでいます。

 

(写真上:高台から望む館山の海と町並み)

 

 

1日の仕事のスケジュールを教えてください。

タイムスケジュールを示します。

8:00  一日の業務確認(メール連絡・カルテ・申し送り・院内外での会議等)

8:30  外来リハ業務⦅1名40分×5名⦆運動器障害に対する作業療法を行っています

12:15 昼休み

13:30 訪問リハ業務⦅1名60分×3名⦆作業に焦点を当てた作業療法を行っています

17:30 清掃・翌日の業務確認

 

   

(写真上左:午前、外来リハの様子 半月板損傷の患者への超音波治療)

(写真上右:午後からは訪問リハへ 訪問車で館山を周っています)

 

 

今の職場で働こうと思ったきっかけは、何かありますか?

訪問リハをしたかったからです。

以前は脳卒中後の回復期病棟に勤務していました。そのとき、吉川ひろみ先生の研修で「クライエント中心の作業療法」に触れ、作業療法のあり方に気づいたこと、その実践を通して毎日泣いていた入院患者さまが別人のように笑顔で元気になりご自宅へ退院されたこと、その際に在宅での環境調整・適応練習の必要性を感じたこと、それが作業療法の文脈とフィットすると思ったことがきっかけになっています。

 

(写真上:「まだ前のように近所の人のところへは行けないけど、お話がしたい」 通りに面した庭へのアプローチと過ごし方を検討し、通りがかる近所の方との交流を再開した。大腿骨頸部骨折術後でお話が大好きな80歳代女性Cさん)

 

 

作業療法士の仕事で、やりがいを感じること、大変だと感じることはどんなことですか?

作業とは、したいこと・する必要のあること・することを期待されていることです。そして、作業療法の目的は、作業の可能化です。すなわち、したいことができるように支援すること、したいことに関われるように支援することです。

作業療法士として、やりがいを感じるときはこんな時です。訪問時、利用者さんがリハ開始の時間も忘れ、療法士の訪問にも気づかずに作業に没頭している姿を目の当たりにするときは、嬉しさがこみ上げてきます。まさに「利用者さん」から「そこに生きる、その人」になっている瞬間です。その方の人生の中で培われてきた作業遂行場面はスタイルが滲み出ており、とてもかっこよく、それまで伴走してきた療法士としては隠れてしばらく見ていたくなる衝動に駆られます。

一方で、利用者・家族・他職種のうちに訪問リハ=漫然とした機能訓練のイメージが定着していることも少なくなくそういった先入観や偏見を払拭することは大変です。

 

(写真上:「おれの代まではしっかりしておきたい」 入退院後に気力体力が低下したものの、数年ぶりに石垣の手入れを再開するまでになった。90歳代男性Aさん)

 

 

今回、千葉県作業療法学会での発表に挑戦された感想、発表してよかった点を教えてください。

事例報告の目的は経験知の共有です。発表後はたくさんのフィードバックをいただき、対象者と紡いだ物語を表現できたこと、共有できたことに安心したというのが率直な感想です。紙面に、データに、聴いてくれた方のこころに事例が残り、いつか誰かの役に立つかもしれないと思うと対象者と紡いだ物語が生き続けていくようで感慨深くもあります。

 

 

学会に参加して、学びになったことがあれば教えてください。

「100点でなくてもいい。100%であればいい」とは誰かの言葉ですが、完璧でなくても全力で取り組み、勇気をもって一歩踏み出すこと。そこには誰かがいて必ず助けてくれます。心強い仲間に出会うことができます。本や論文をたくさん読むことができます。そこでできたつながりや拡がりはよりよい作業療法を紡いでいくことになるでしょう。

 

 

今後、作業療法士として取り組んでみたいこと、挑戦してみたいことがあれば教えてください。

まずは認定作業療法士の取得、そして専門作業療法士の取得。いつかは保険制度の外でも役に立てるようになりたい。そのような勇気や実行力をもてるようになりたい。

 

 

作業療法士として働く中で、ご自身が大事にしている考え等があれば教えてください。

Doing。対象者と一緒にやってみること。起点を作ること。そこから共に歩み始めること。伴走すること。

 

(写真上:一緒に泥だらけになって作業をともにすることもあります。)

 

 

高校生の頃に経験しておいた方が良いと思うことはありますか?

自信をもって自分の興味関心に価値を置くこと。それに情熱を注ぐこと。行動すること。まずは自分の作業を捉えること。そのことは将来、対象者のなかに作業を見いだし、それを支援することにつながります。

それと、本を読むこと。わからないことは人に聞くこと。

 

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これから、作業療法士を目指す養成校の学生さん、高校生へメッセージをお願いします。

作業とはしたいこと、する必要のあること、することを期待されていること。通常は意識化されず、あたりまえに営まれていること。人が生きるうえで空気と同じように必要なこと。

作業療法は作業を可能化すること。あたりまえを作ること。その人の人生のひと時に関わること。

作業療法士の支援を必要としている人がいます。作業療法士が関わることで健康で幸せになれる人がいます。

作業療法は、おもしろくて、やりがいがあって、必要なことです!

 

(写真上:「ダークダックスを聴くと素敵な思い出が蘇って気持ちが落ち着くの」 時々、不安になってどきどきしてしまうことがある。操作方法を習得して聴きたいときにCDをかけて気持ちを落ち着かせるようになった。90歳代女性Bさん)

 

 

 

(取材・編集 HP委員橋本 2024.5.30 update)