一般社団法人 千葉県作業療法士会 Chiba Assocition of Occupational Therapists

一般の方へ Guest

千葉県作業療法士会の活動に参加されている作業療法士に聞いてみた!

We asked an occupational therapist who is active in the Chiba Prefecture Occupational Therapists Association!

      • 今回は、印西市にある日本医科大学千葉北総病院で働く上原秀幸さんに、急性期病院での臨床経験や、災害医療に携わる活動について聞いてみました。
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    現在、どのような領域、職場で働かれていますか?

千葉県印西市にある学校法人 日本医科大学千葉北総病院で働いております。当院は三次救急体制の急性期病院で27診療科目574病床を有しております。全国でも有数のドクターヘリ導入による救急医療や基幹災害拠点病院として災害医療に力を入れております。

 

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    1日の仕事のスケジュールを教えてください。

■08:00~ 出勤
■08:30〜 始業 朝礼(全体ミーティング、作業療法部門ミーティング)
■08:40~ スケジュール確認やカルテからの情報取集などの診療準備
■09:00~ 診療業務
■12:00~ 昼休憩
■13:00~ 診療業務(病棟カンファレンス等にも適宜参加)
■16:30〜 リハビリテーションカンファレンス
■17:00~ 終業
上記以外にも、研究や自己学習を含む研鑽や部門内勉強会などが適宜開催されています。

 

 

  • 今の職場で働こうと思ったきっかけは、何かありますか?

私が最初に勤めた職場では通所・訪問リハビリテーションを中心に従事しており、地域で暮らしているクライアントへの作業療法が中心でした。介入の中でクライアントが現在までに至る経緯等を把握していく過程で『もっと早くできることはなにかあるのかな?』という疑問が生まれたので、その疑問解決の為に回復期・地域包括ケアを有する機関に転職しました。次の職場でも疑問解決はいくつかできたのですが、また同様の疑問が生じました。そして最終的にはリレーの第一走者の様に、作業療法士としてクライアントに最初に関わる事ができる現職の急性期を選んだという経緯になります。

 

 

  • 作業療法士の仕事で、やりがいを感じること、大変だと感じることはどんなことですか?

■やりがいを感じることについて
急性期での作業療法士の役割で『リレーの第一走者』という表現をよく使わせていただくのですが、クライアントにとって人生で最初に出会う作業療法士になる機会が多くあります。作業療法という機会を通して身体や精神における介入だけでなく、作業療法士のイメージや印象といったものも形成することになり得るので大きな責任は勿論ありますが、『作業療法士って素敵な仕事ですね』などの言葉を頂けた時には非常に嬉しく思いますし、とてもやりがいを感じます。

 

■大変だと感じることについて
現在は急性期医療機関で作業療法を実践しておりますが、急性期では良くも悪くもクライアントとその周囲に、劇的な変化が訪れます。『昨日までは普通に過ごしてたのに・・・』という言葉も何度も聞いてきました。災害医療にもリンクする状況はあるのですが、今での日常が突然崩れてしまった状態で入院されてきます。そのような時期に作業療法士として関わりを始めていくのですが、心身共に不安定な状況下で如何によりよい状況に向かっていけるような支援、環境づくりというのは日々模索しながら過ごしています。

 

 

 

    • Disaster Medical Assistance Team(:災害派遣医療チーム、以下DMAT)に 参加しようと思った動機について教えてください。 

      DMAT隊員を目指したきっかけとなったのは2016年に起きた熊本地震です。私は元々九州出身で、学生時代の臨床実習地や最初の職場が熊本県でした。震災によって職場の同僚達だけでなく、沢山のお世話になった地域の方々が被災者となりました。その時に何か少しでも力になりたいと思いましたが、実際には大した事もできず無力感や申し訳ないという感情が強く残りました。それ以降、いち医療従事者・作業療法士として災害時に何かもっとできることはないのか?と考える中で、災害医療に興味を持ちDMATという選択肢に行き着きました。
      DMATに関してはご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、大規模な災害や多数傷病者が発生した際に急性期(概ね48時間以内)から現場活動を行う専門的な訓練を受けたチームです。私はその中で業務調整員(ロジスティクス)という役割を担います。ロジスティクスは災害対応における情報収集や資源準備・管理(移動手段や医療機器、生活用品等)を請け負い、チームメンバーが現場で安全且つ効率的に支援を行えるような状況を整えるのが役目のひとつです。

 

 

    • DMATでは、どのような作業療法士の視点が役に立っていますか?

      DMAT活動では被災者に直接的にリハビリテーション等を提供する機会はありません。しかし、被災者も普段から接するクライアントも身体や環境の変化によって心身共に不安定な状態にあります。作業療法士は身体的・精神的に加えて環境という視点も持ち合わせているので、被災者の方々への関わりだけでなく現在の生活環境を見据えながら、避難所等の観察や安全管理への意識が役に立っていると実感します。

       

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  • DMATの活動の大変なところや、やりがいについて教えてください。

  • DMAT活動の大変な所は多くありますが、特に体調管理は感じます。被災地活動では慣れない土地に出向き、寝泊りする場所や食料や生活用品も限られた中で活動を行うことが多くあります。普段の業務と異なり昼休憩等の決まった時間での行動はなく深夜帯での活動や睡眠時間の短さに加えて、メディア対応にも配慮する場面等が多々生じます。そのような状況で被災者の方々への支援をさせていただいています。また場合によっては自身・家族等も被災する可能性もある中で出動する場合もあります。災害は起きないに越したことはないと常々感じているので、被災者は1人でも少ない方がいいというのが本音です。その上でDMAT活動のやりがいを表現するのは心苦しいですが・・・DMAT活動は誰でも行なえる事ではないのですし、隊員になるまでもなってからも大変な日々は送ります。その中で災害医療にも作業療法士が従事できるという可能性を拡げたい想いとDMAT活動を通して作業療法士が少しでも多くの人達に知ってもらえる機会になることが、いまのやりがいというか一番の目標です!

 

 

 

  • DMATでの活動経験が、普段の臨床や、職場に役立っていることについて教えてください。

災害医療では、『トリアージ』という場面があり、限られた資源や環境の中で傷病者を選定しなければならない事があります。平時であれば満足にサービスを受ける事ができたかもしれない方々や昨日まで普通に過ごしていた人々の日常が一瞬で崩れてしまいます。そのような方々への支援経験を通して普段の臨床・職場に役立っていると実感するのは、①平時から可能な限り出来る事を実践しておきたい ②時間を大切にしたいという考えが根付いたことです。職場内外の人間関係構築やクライアントとの作業療法場面など多岐に渡って、かけがえのない時間を大切にしていくことが本当貴重であることを常々実感しています。

 

 

千葉県作業療法士会に入会するメリットについて、ご意見をお聞かせください。

DMAT隊員になった経緯の部分でも触れましたが、私は元々九州出身で熊本県や福岡県の病院に勤めており、千葉県に来た時には親族や友人が一人も居ない状況でした。その中で千葉県作業療法士会に入会して、いろいろな研修会に参加していく過程で沢山の人との繋がりを増やす大きなきっかけにできました。また、職場は急性期医療機関ですので、回復期や地域へクライアントを送り出すフェーズを担うことが多く『顔の見える関係作り』ができる事で安心して千葉県域を中心に、多くの素敵な作業療法士のところへクライアントを送り出すことができています。

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    • これから、作業療法士を目指す養成校の学生さん、高校生へメッセージをお願いします。

作業療法士の面白さや奥深さは『多様性と可能性』にあると感じます。作業療法の対象者は年齢、性別、国籍や文化等は勿論、抱えている疾病や障害、困りごと、生きてきたプロセスも様々です。
自分自身の人間としての成長が、作業療法場面に大きく還元できるのだと感じることもあります。また私は現在医療機関に勤めていますが、福祉施設や行政機関、学校や企業等のさまざまなステージで活躍しているOT仲間も沢山います。同じ作業療法士という仕事なのに色々な形で人や社会と関わることが出来るのだと作業療法の可能性を実感する機会もありますし、災害医療等の新しいステージに携わっていく事ができるのも大きな魅力のひとつだと思います。クリエイティブな面も沢山ありますし、皆さん1人1人の個性が強みとなり、作業療法士の可能性を広げていくに繋がると考えています。一緒に作業療法を楽しんでみましょう!

 

 

 

(取材・編集 HP委員橋本 2025.1.31 update)