小児領域で働く作業療法士に聞いてみた!
learning from occupational therapist working in the pediatric field
今回は、千葉県千葉リハビリテーションセンターの小児療法室で、作業療法士として働く吉田尚樹さんに、小児領域の魅力や、どのようにして小児領域で働くに至ったのか聞いてみました。
現在どのような領域、職場で働かれていますか
私は、リハビリテーション医療施設、総合療育センター、障害者支援施設、補装具製作施設をもつ、小児から高齢の方までを対象とした千葉県内の総合リハビリテーションセンターに在籍しています。
その中で私は、脳性麻痺をはじめとした肢体不自由のある子どもを中心に、外来および入園による作業療法に携わっています。
一日の仕事のスケジュールを教えてください
8:30から始業となります。まずは室全体(小児PT、OT、ST)および科内(小児OT科)ミーティングがあります。そこで全体への共有事項や科内の報告および連絡事項などを共有します。なかなか全体で顔を合わせる時間が少ないため短時間ではありますが貴重な時間です。その後、午前の診療(作業療法)開始までに、カルテから患者様の情報収集、当日代行予定の申し送りなどを担当スタッフ間で行い、作業療法室の清掃と患者様の作業療法準備を行います。
午前は1患者60分の個別作業療法を3名実施します。昼休憩は1時間です。スタッフによっては昼食の時間に通園利用者様や入園患者様への摂食支援に入り、終わり次第昼休憩となります。午後も、午前中と同様に3名実施します。診療終了後は作業療法室の片付けとその日実施した患者様のカルテ記載、その他の書類作成やミーティングなどの間接業務を行い、17:15に終業となります。
作業療法士の仕事で、やりがいを感じること、大変だと感じることは、どんなことですか
①やりがいについて
子どもたちや保護者の方と、どんな自分になりたいか?どんなことに困っているのか?どんなことが必要か?など作業療法で一緒に取り組む目標をみんなで考え、その目標に向かって試行錯誤をしながら達成できたときに、子どもたちや保護者の方が見せてくれる笑顔や言葉に、心の中で「作業療法士として子どもたちの支援に携われて良かった」と感じます。
また、子どもたちはどんなことでも遊びに変えていきます、「そんな遊び方もあるんだ!」と驚かせられることもしばしばです。子どもたちは遊びの天才なんです。そして、その遊びを通して子どもたちの可能性はどんどん広がっていきます。そこに少しでも携わりたいと思わせてくれることにもやりがいを感じます。
②大変なことについて
子どもたちは本当に素直です。面白いことはどんどん取り組んでくれます。一方、面白くないと思ったことは、なかなか取り組んではもらえません。作業療法士は子どもたちにこうなって欲しい、これをやってもらいたいと押し付けてしまうかもしれません。そうすると子どもたちはそれをすぐに感じ取り、作業療法士を「この人は面白くないから遊ばない」と思うこともあります。もちろん私もこの経験があり、その時はもう冷や汗が止まらなかったです。でも、これも小児作業療法の醍醐味だと私は思います。リハビリテーションや作業療法の主役は、常に子どもたちです。子どもたちとの瞬間事にストーリーがあるからです。
今の職場で働くまでに、養成校学生時代からどのように行動されてきましたか
当時の私は、何かを意識して養成校時代に取り組んでいたことがあったかというとこれといったものはあまりありません。強いて言うなら、臨床実習(実際の現場に出て学ぶ科目)では小児関連の実習施設へ行くことができなかったため、養成校の先生が勤務している小児関連の施設のボランティアや勉強会などへ出来るだけ参加するようにしていました。就職活動において小児関連の実習経験がないというマイナス点を、少しでもプラスにできるように、また将来、小児関連の職場に就職できたときに自分が困らないように今できることを行動していました。
あと、これは今だから思いますが、学生の頃から自分の養成校以外の学生とも繋がっておくとよいのではないでしょうか。自分の養成校以外の作業療法の視点を知ることができます。また、「同世代にこんな学生がいるんだ」と自分をエンパワメントしてもらえるからです。その他にも学生の特権で、無料の学会や研修会などがあるため参加してみるのもおすすめです。教科書や養成校の先生からは知ることができない作業療法の世界を知ることができ、将来のキャリアデザインに大いに役立つと思います。
養成校卒業後、取り組んでよかったことがあれば、教えてください
今後挑戦してみたいことがあれば教えてください
①研究について
私は現在、小児リハビリテーションに関する研究に取り組んでいます。研究と聞くと敷居が高く感じてしまうかもしれませんが、先に述べたようにこれまでに出会った方々のサポートも受け、臨床をしながら研究にも取り組んでいます。臨床で感じた疑問や課題を少しでも解決し、その結果を学会や論文という形に残し社会へ発信することで、作業療法士だけではなく、その先にいる子どもたちが少しでもより良い生活になれるように貢献したいと思っています。
②当事者としての活動について
私は、先天性白内障という視覚障害の当事者でもあります。社会にはまだまだ誰もが生活しやすいとは言い難いです。それは制度や物理的環境だけではなく、人という人的環境の影響もあると考えています。社会が当事者への理解を深め、誰もが生活しやすいような社会に近づけるように、私はその架け橋となるような活動をこれからもできればと思っています。
これから作業療法士を目指す養成校の学生さん、高校生にメッセージをお願いします
作業療法は複雑だけど奥深いです。きっと学んでいく、仕事をしていく過程で色々な葛藤があると思います。でも作業療法は疾患に限らず、対象者の作業(分かりやすく言えば生活の営み)に関する問題を解決できる専門職です。ぜひその魅力を味わいながら、一緒に作業療法を社会へ届けていければ嬉しいです。作業療法の世界でお待ちしています。
(取材・編集 HP委員 橋本 2023.9.4 update)