一般社団法人 千葉県作業療法士会 Chiba Assocition of Occupational Therapists

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作業療法士三年目に聞いてみた!

learning from third year occupational therapist

今回は東京湾岸リハビリテーション病院に勤めて三年目の大谷さんに、日々の業務やОTとして働きながらどんなことを思っているのか、これからОTになろうと思っている学生さんへのアドバイスを聞いてみました。

 

一日の仕事のスケジュールを教えてください

当院は入院と外来の患者様のリハビリテーションを行っていて、病棟は回復期リハビリテーション病棟のみですが、私は入院患者様の作業療法を1日に18単位前後実施しています。1

脳卒中の患者様を多く担当していて、比較的軽度な障害の方から重度な方までさまざまです。

患者様ごとに定期的なカンファレンス 注2)と新患カンファレンス(入院されて1週間以内に行うカンファレンス)を行っています。

 

注1)20分以上個別療法として訓練をおこなった場合1単位とみなします。医療機関の作業療法士1人につき、1日18単位を標準として、週108単位まで、1日24単位を上限としてリハビリテーションを実施します。2017年時点では、回復期リハビリテーション病棟に入院している患者様は、1人当たり1日に最大9単位(3時間)までリハビリテーション(以下,リハビリ)を受ける事ができます。医師の処方にもとづき患者様の病気や障害に合わせて、作業療法・理学療法・言語聴覚療法の関わる時間割合を調整し、例えばそれぞれ1時間ずつ提供することもあれば、患者様の体力を考慮して40分ずつの提供にとどめるといったように患者様のニーズに合わせて調整して提供します。

 

注2)カンファレンスとは、医師、看護師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士等の関連職種が集まり、患者様の情報を共有し今後の治療方針等を話し合う会議の場です。

 

 

 

作業療法士の仕事で、やりがいや魅力を感じるのはどんなときですか

リハビリに対してとても消極的な患者様が「こんなリハビリやってもよくならないわよ」とおっしゃっていましたが、リハビリの重要性を伝え、少しでもよく動けるようになったことをお伝えしていたら、どんどんやる気が出てきて、最後にご自宅に退院するとき「今までリハビリ続けてきてよかったわ」って言って下さり、あきらめずにずっと一緒にリハビリやってよかったなと思いました。

 

Q.普段どんな介入をしていますか?

作業療法をやるうえで患者様の生活が一番大事かなと思っていて、作業療法開始時に患者様の一日の生活の流れを必ず聴くようにしています。例えば「朝何時に起きて朝ごはんまで何をしていますか?」とか事細かに聴いて、しっかり患者様の生活をイメージします。事細かに聴くことで退院後に必要な課題とかも一緒に見えてきますし、患者様が大事にしている作業を発見できるので情報収集を綿密にやるようにしています。

生活に必要な課題がわかったら、リハビリ室でその動作の要素を取り出して問題なく出来るかやってみたり、どんな状況でどんな環境で行っているかなどを患者様と確認します。以前担当した患者様ですと伝い歩きでご自宅に退院する見通しでしたが、その患者様は毎日仏壇にお茶を供えるのが日課だったので、キッチンから仏壇までの距離や段差があるのかを確認をして練習しました。

 

Q.介入していて難しいことはありますか?

難しいところはやはり作業療法士としては実際お家でやると転倒の危険性など危ないなって思ったときに、でもやっぱり患者様は一人でやりたいっていうところの折合いをつけるのが難しいかなって感じます。最終的には、環境調整をして、手すりを設置したり、伝い歩きできるように安定感のある物を設置したりして患者様お一人でできるようになった方がいらっしゃいました。

患者様の思いと、作業療法士が必要だと思うことのすり合わせがちょっと難しいなと思っています。例えば、患者様の上肢に中等度の麻痺があってでもお箸を使えるようになりたいという方もいらっしゃると、お箸が使えるようになるのは難しいかなとか、入院期間中に獲得するのは難しいなと思うことがあります。それから、洋服を着替えられるようなりたいという患者様の思いはわかるのですが、でもそれ以前にまずトイレに介助が必要だったりとか、車いすへの乗り移りに介助が必要といった、そういった先にやるべき事、退院に向けて作業療法士が必要だと思う事のすりあわせがちょっと難しくて……患者様の思いは必ず汲み取るようにして、こちらからも提案して進めていくときに難しいと感じます。注3)

 

注3)医療職の多くは、まず患者様が「トイレの自立」など身の回りのことが自立することが重要と考えることが多いです。しかし作業療法士は患者様が「何からできるようになりたいか」を聞き、患者様がやりたい作業を用いて心身機能の向上をはかり、ご家族が患者様に期待している「トイレの自立」につながるようにアプローチすることもあります。

 

作業療法士の仕事で、大変だと感じるのはどんなときですか

例えば、退院後に必ず歩行器や杖を使用してほしい方もいらっしゃるのですが、「あんまり必要ないわよ」とそのまま歩いてしまう方、環境設定の提案とか。患者様と一緒に目標や必要な課題を考えるのですが、一緒にすんなり決まる人もいれば、これがしたいと心身機能に比べて難しい作業を希望する方もいるのでそういった場合が難しいですね。

以前は、患者様が入院されたら、「麻痺があるから麻痺をよくしよう」とか、「筋力が低下しているから筋力強化をしよう」とか身体機能面ばかりをみていて、その先の必要な「活動」と「参加」が全然みれていなくて……今は前よりは、まずは患者様にとって必要な「活動」と「参加」を考えてからそれに必要な機能を考えて、その機能を向上させるためのリハビリっていう形で考えられるようになっていているとは思います。

最初は全然視野が狭くて、でも自分が休みの時に代行で入ってくれた先輩のアドバイスとか、「こんな患者さんの作業療法をどうすすめたらよいのか悩んでいるんです」っていう相談をしながらやっていって、先輩のアドバイスでだいぶ考え方が変わってきたって感じですね。先輩は本当に頼りになりますよ。とてもお世話になっています。

 

Q.自分の臨床経験年数にあわせて高めていくために何か工夫していることや、勉強していることはありますか?

新人の頃は臨床するのに精いっぱいだったのですが、ちょっと外部の勉強会に参加したりとか。あと、文献を読むようにはなりましたかね。やみくもに勉強会にいくのではなく、今自分が担当している患者さんで悩んでいること、例えば脳卒中系の患者さんで悩んでいれば脳卒中の勉強会に行けばいいですし……。実際の患者さんを経験しないとあまり頭に入ってこないので、今疑問に思っていることに関連した勉強会に行くと、すぐに臨床に応用できますし、良いと思います。

先輩はよく伝達講習を開いてくれてとても勉強になります!先輩もこんな勉強に行っているんだとか、私もこんな会に行ってみようとか思える機会になります。

 

 

作業療法士になろうと思ったのはいつ頃ですか

私は結構ぎりぎりで、高校3年生の末に決めました。ずっと、人と関わる仕事をしたいなと思っていて、具体的にどの仕事にしようかなと考えていたら、母が看護師だったので『作業療法士』っていう職業もあるよと勧めてもらったのがきっかけです。

カウンセラーとか人の心にかかわる仕事がしたかったのですが、作業療法であれば身体機能面以外にも「心」について関わるって聞いてすごく興味がわきました。患者さんと一対一で関わって、その患者さん個人個人の「人生」とか「生活」とかに深くかかわるってなかなかない仕事かなって思ったので興味を持ちました。

 

Q.高校生の頃持っていたイメージと、実際とでは、ギャップはありましたか?

ギャップ・・・そうですね。思っていたよりも患者さん以外にもご家族との関係性も考えないといけないですし、楽しいことばかりではないですし(笑)。作業療法は楽しくやっているイメージがあったんですけど、けっこうリハビリに消極的な方への関わりが大変だと思いました。

 

今の職場で働き始めるきっかけや、どんなことを大切に、職場を選んだのか教えてください

Q.東京の大学に在籍していましたが、千葉県で働こうって思った理由は何かありますか?

まず親元を離れて一人立ちをしたいと思ったのが一つと、ここの病院が回復期専門病院でリハビリにかなり力を入れているっていうのと、研究も積極的に取り組んでいると聞いて、実際に見学してみていい雰囲気だと思ったのでこちらに決めました。

 

Q.ほかの県ではなく、千葉県を選んだ理由はありますか?

すごく個人的なことなんですが、すぐ帰れるくらいの距離がよくてここが2時間くらいで帰れるので……親元を離れて自立ができるのと気軽に帰れる距離ではあるので、自立と親に会うのが気楽にできるのかなと。

 

今後、作業療法士としてご自身がやってみたいことや、目標を教えてください

今、研究で興味があるのが、患者様の予後予測だったりとか、ADL(日常生活活動)の阻害因子とかについて興味がありまして、今後勉強していって臨床に活かせればいいかなって思っています。

 

Q.今後、大学院の進学は考えていますか?

えー(笑)興味ありますけど、まだ臨床に専念したいかなと思います。

 

Q.作業療法士としてどういう風に成長していきたいですか?

今、退院後の介護保険サービスなどを提案することが多いのですけど、なかなか実際はサービスを使ってなかったりとか、ケアマネさんやワーカーさんに頼りっきりになってしまう部分もあるので、そういったサービスの提案の仕方等を学びたくて地域生活期の方も学びたいと思います。

 

これから作業療法士を目指す学生さんへのメッセージをお願いします

Q.どんな人が作業療法士という仕事に向いていると思いますか?

患者様の話を聴いて患者様が必要としている作業療法を提供するので、人と関わるのが好きな方なら大丈夫だと思います。

 

Q.高校生の頃に経験しておいたほうがいいことは何かありますか?

実際就職するとその分野しか見られないことが多いので、学生さん対象の病院見学へ参加したり、実際の職場を見たりボランティアとか経験しておくといいと思います。

 

Q.作業療法士として1年目・2年目までに勉強しておいた方が良いことは何かありますか?

とにかく今担当している患者さんに必要な作業療法はこれでよいのかと疑問を持つことが重要かなと思います。結構ひたすら臨床をやるのに精いっぱいなことも多いのですけど、疑問に思ったことは調べてみるといいかなと思います。

一年目だと患者さんの予後予測がうまくいかなくて、どれだけよくなるかわからなくて手さぐりでやる部分が多いと思うので、入院時にこれぐらいの機能だとここまで改善しますよとか、そういった研究がよくあるのでそういうのを踏まえて臨床に入れるとよりいいかなと思います。

 

Q.これから作業療法士を目指す、養成校の学生さんや、高校生に何かメッセージをお願いします。

作業療法というのは人とかなり深く関わって一人ひとりの人生に関わるあまりほかの職種にはない素敵な職業だと思うので、勉強や実習などとても大変だとは思うのですががんばって下さい。

 

東京湾岸リハビリテーション病院

 

(取材・編集 HP委員 内海・橋本  2018.1.17 update)

 

作業療法士の仕事で、大変だと感じるのはどんなときですか