養成校教員に聞いてみた!
Occupational therapist who works as a teacher
- 今回は、千葉県立保健医療大学で教員として働く、作業療法士の松尾さんに、臨床のエピソードや教員というキャリアについて聞いてみました。
臨床で働いていた時の記憶に残るエピソードを教えてください。
新潟県という雪国の環境で「作業療法」に携わったのは、作業療法士として、対象者となる方の「日常生活を見るということに意識し始めるきっかけ」という意味では、南国育ちの自分にはすごく良い経験になりました。地域特性の違いによる生活体系や生活習慣が異なる作業療法場面を経験することで、作業療法の主目的である生活環境の調整を考えた場合、作業療法アプローチの引き出しが増えたことを実感しました。例えば、新潟県内の雪深い地域にある老健施設のデイケアの送迎に携わっていた時に、約3m超積雪があり送迎車が対象者の自宅の敷地まで入れず、そりを用いて対象者を玄関前から送迎車まで移動させたことや、その地域では積雪のため2階部分に玄関が設置している自宅(高床式の家屋)が多く、日々降雪で積雪量が変化する中での対象者の移動方法を検討したことは、それまでの自分には考えられない体験でした。
少し余談となりますが、雪が降ったとします…新潟市内の病院では朝約40cmの積雪があっても、平時の9割以上の通院患者さんが来院されます。しかし、最初に勤めた高知市内の病院では、外来通院者が100名来院予定でも、うっすら道に積もるかどうかといった降雪でその日の外来通院者が1割未満しか来られない…これは私の中で大変なカルチャーショックでした。これまで生活環境の違いによる行動や考え方が、日々の生活にも反映していると実感しました。
このことから今でも対象者の方々と関わる中で、十人十色違ったアプローチを心がけています。皆さんも機会があれば、文化や環境が異なる生活を経験すると作業療法士として捉え方の幅が広がると思います。大変な事もありましたが、様々な生活環境を実際に体感したことで、作業療法士としての関わり方を広げることにもつながり、ものすごく物理的にも感覚的にも勉強になりました。
養成校の教員になりたいと思ったきっかけを教えてください。
臨床家として行き詰っていた時に周りの先輩方に相談しました。その時に大学院への進学を勧められ、環境を変えて少し違う空気を吸うのもありかなという気持ちで進学しました。その進学のタイミングと同時に縁あって私立大学に勤め始め、現在は千葉県立保健医療大学で教員をしています。
今でも作業療法についての様々な悩みは絶えません。しかしながら養成校教員として学生指導の難しさや楽しさ、学生から教わることもあり、その事が自分のやりがいにもつながっています。当初、臨床に携わっているときには、教員になりたいと思ったことは全くなく、今自分が教員を続けているのは先輩に相談したことが大きなきっかけであったと思います。可能な限り作業療法の発展に寄与すべく、これからも後進の育成に日々努めていきたいと思います。
作業療法養成校の学生にメッセージをお願いします。
これから学生の皆さんは、臨床で働いていた時の話でも触れましたが、何か新しい事に挑戦したいときやいろいろと悩むとき、うまくいかず壁にぶつかるときがくると思います。そのような時は身近で相談しやすい人との会話や職場以外の人との交流、他の職能団体の研修会参加、新たな趣味活動の獲得などで様々な立場の人からアドバイスをもらい、これまでとは異なる環境に身を置いても良いのではないかと思います。作業療法士の先輩として、もし上手くいかないときなどは遠慮なくご相談ください。何かお力になれることがあると思います。紆余曲折…それなりに人生を歩んできましたので…(笑)
是非、作業療法士を目指して頑張って下さい!!
皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。
(2023.5.18 update)